2012年2月20日月曜日

生産拠点の海外流出に関するヨタ話

史上空前の円高で製造拠点の海外移転が怒濤のように進み産業空洞化が進む 
良い子のみんなは海外に移転しちゃうようなチンケなお仕事じゃなくもっと重要かつハイスキルなお仕事しちゃってると思う 
けどおいらのような失業者には結構戦々恐々たる思いで眺めている訳です 

ま、そんなこんなで進む怒濤の海外移転 
その背景について一つ 
もちろんお偉い評論家や名だたる企業のお偉いさんが死ぬ程繰り返す話を否定する気は無い 
基本は「なんたって人件費が」って事、なんだろうと思う 
ただし、既にそれほどの差は無くなりつつあり、毎年13%以上の賃上げが法制化されてる国、中国にばっかりってのも不思議な話 
ま、その理由の一つとしてこんな事もあるという事で 

以前一時期だが国内での委託製造を止め中国での生産に切り替えたっていう中小企業の管理部マネージャをしていた事があった 
全ての製品を中国で生産しているものだから新製品や製品の改良の話は中国に行ってしてくる事になる 
ごくごく単純な製品(趣味の世界といっていい)だからそれほど技術的に難しい製品ではない 
それもあって打ち合わせには三代目のボンボン社長とナンバー2の営業統括役員の二人で出張というのが常 
技術関係の人間は随行せず 
当然単純な製品故、価格や顧客要望を伝えるだけ 
ま、もう一つはお偉いさんどうしで香港あたりで遊んでくるつもりもあったのだろう 
さらに面白い事に国内生産の時と不良率(やたら不良が多かった)も含めてコスト計算すると少なくとも中国で生産するコスト面でのメリットはそれほど無い、と言う事に気付いた 
でだからと言って中国出張を楽しみにしてるワンマンオーナー社長に進言する訳にもいかず仲の良かった技術担当と飯を食いながらコストの話を飯を食いながらした事がある 
そこで聞いたのは意外な話だった 
作れないと言うのだ、中国以外では 
日本の中小企業の優秀性は良く言われる事だが実際の所指示した製品を要求スペックどおり、あるいはそれ以上の精度で仕上げる点では正しい 
不良率も著しく低い 
ところがそれは言われた仕事に全力を尽くすということで企画能力は0に等しい 
一次請け二次請けのはっきりしている大企業ならいざ知らず、サプライチェーンが確立していない中小の発注側は自ら企画し、発注先を探し組み立てを依頼する 
一般的な海外進出ではさらにその作業は難しい 
それが中国では単純な製品では口頭ベースで依頼すれば全て完了する 
多数のブローカーが企業間をつなぎ発注側の初期の負担は少ない 
そこで安易に発注側の企画、物流構成機能を放棄して「お任せ」にしてしまう 
そうなると今度は日本へ戻すどころか他国に再移転も難しくなる 
再移転したとしても主導権は中国側のブローカー、コーディネイターが握る事となる 
かくして日本側の発注元中小企業は製品の生産は中国で、あるいは中国側の人間を通すより他に無い 
その後で不良率が高かろうが年々生産コストが上がろうがなすがまま 
かくして生産は中国、販売は日本が確立する 
そしてやがてコピー製品が出回り... 

中国への生産移転は以外にもコスト以前の話、生産能力の前に企画能力が日本企業から失われている事の反映 
ま、そんなワケで生産の海外移転、もとい中国移転は不可逆的に進行して行くのです 
ま、立派な企業にお勤めの方は関係のない話だとは思いますけどね 

2012年2月17日金曜日

なぜ韓国歴史ドラマの武人はトンデモな鎧を着ているのか

久しぶりにTwitterだけでなくちょっと長めの文章を書いてみる事にする 
リハビリってことで軽いヨタ話から 

実際には見た事が無いのだがここ数年韓国ドラマがテレビで嫌というほど流されている 
基本はヨンさまブームを引きずった恋愛もの、恋愛コメディものがおばさま達のハートを鷲掴みにしているようだが、これらの源流が日本の大映テレビの量産したテレビドラマに源流を発すると言う事は良く知られた話 
今じゃなかった事にされているものの当事者達が10年程前には「大映テレビの○○のパクリです」とあっけらかんと語っていた話 
で、最近は韓国ドラマも歴史ものが増えて来た 
染料がほとんど無く、かつては自ら「白衣の民」と称していた韓国で極彩色の民族衣装を着ていたり時代考証がめちゃくちゃなのはご愛嬌 
基本中国や日本、近代朝鮮時代のものがベースになっている 
その中で特に何がベースなのか分からなかったのが武人達の着込んでいる甲冑 
やたら装飾が多く最近のゲームでしか出てこないようなすごいデザイン 
で、持ってる武器は日本刀や日本の太刀、中国の剣だったりする 
てっきりこのあたり最近のゲームデザインが元になってると思っていたのだけど最近面白い話を知った 
実はこのあたり韓国独自の小説の一分野とその挿絵から来ていると言う 
韓国では何にでも優劣序列を付ける国 
最近あまりに多くてワケの分からないK-POPとかでも各グループで序列があって歌う順番とかが決まってる、なんて話を聞く 
ジャンル小説などにもそれぞれの分野があって書き手も固定化されている 
で、日本では結構メジャーな存在のSFはほとんど最底辺で素人作家しか居なかったり(1度SFを書くと他が書けなくなる)する 
そのあたりの韓国SFの事を調べてたら韓国では中国由来の武侠小説と言うものが結構人気の高い分野として確立している 
武侠小説とは「江湖または武林と呼ばれる、実際存在した中国の現実と重なったり重ならなかったりする奇妙な場所、奇妙な時間に存在する世界」を舞台にした小説 
日本の時代小説と違って、若い世代にもけっこう読まれているらしい 
なんというか一つの小説のジャンルが同一の「何でもあり」の設定を基礎に成り立ってる訳だ 
ここに出てくる武人達は設定がファンタジーだけに武器も装束も時代背景や文化的正当性など全く無視している 
ちょうどハリー・ポッターや指輪物語の世界を思い出してくれればいい 
そこでより派手な衣装により派手な武具、より派手で豪華絢爛の宮廷絵巻の世界で正義と名誉と王女様の愛を求めて戦うわけだ 
このあたりの小説、80年代あたりまでは明確に一つのおとぎ話として認識されていた 
まだ漢字の読める世代が居た頃までは 
それが90年以降の民族主義の高まりと文化的断絶のせいで怪しくなって来た 
ご存知の通り韓国では李氏朝鮮時代の書物、記録と言えばは漢文 
しかも極端な小中華思想(明滅亡後偉大なる中華の正当な継承者は自分たちだという思想)により歴史的記録は自国に関してまったく興味が無い状態が続いていた 
もとより自国の歴史資料が乏しい所にその記録さえ読めない世代が社会の大多数を占めるに至った 
ここに民族主義の高まりで調べる事の難しい歴史(そしてあまり誇れない属国としての歴史)より「あるべき歴史」が受け入れられるようになっていく 
ここで脚光を浴びたのが武侠小説という名の歴史ファンタジー 
これこそ「あるべき歴史」として一般に受け入れられ実際の歴史だと認識されて行く 
ファンタジーはここにリアルとなっていった 
実際には応永の外寇にみられるように驚嘆に貧弱な軍隊と中国の属国としての歴史は一掃され華やかな戦国絵巻が韓国歴史ドラマに採用されるにいたった、といわけだ 

注釈 
応永の外寇とは韓国では乙亥東征とされ韓国の対馬領有の根拠となっている 
227隻、17,285名の軍勢でもって対馬に侵攻 
民家や漁船を焼き払い村々を襲ったが対馬の宗氏の兵600人に撃退された